RSS
 

中世イングランドの縮絨(フリング)にまつわるお話

Nigel Cabournより、カットソーのように軽く柔らかな着心地のウール縮絨生地を使用したFULLING WOOLシリーズが3ピースで入荷致しました。それにちなんで、おまけのお話をひとつさせてください。

古代ローマ時代に始まったと言われる縮絨が英国で盛んになったのは12世紀後半ごろ。シトー会(カトリック)の修道院などで始まりました。豊かな牧草地を誇るイングランドでは牧羊やウールの輸出などに伴い、ウール製品の需要も増え、縮絨(FULLING)を専門とするフラー達(FULLER)も沢山いました。当時の加工プロセスはお世辞にも快適とは言えない過酷なものでした。それは村の家々から集められた尿を発酵させて、大きなタライに入れ、それに浸けたウール生地を素足で7~8時間踏み続けるというもの。発酵した人尿は悪臭を放つため、もちろん冬の間も外で行われていました。当時、油脂たっぷりの天然ウールで織り上げられた生地は重くベトついており、現代のように目が詰まっていないため、そのまま着用するにはあまり心地よいものではありませんでした。尿中のアンモニアによって油脂が分解され、さらに縮みがかかり目の詰まった生地は、同時に柔軟になり、洗って干した後は軽やかで暖かい着用感に生まれ変わります。15世紀末ごろには尿の使用は廃止されますが、およそ200年に渡ってこの過酷な作業を続けてくれたフラー達のおかげで、今日の私たちがこの生地感を楽しめているんだと思うと、とても感慨深い気持ちに満たされます。

今後FULLING WOOLシリーズを着用する際には、現代だけではなく中世のワークマン(ウーマン)達にも敬意を表して袖を通したいと思います。

(ヒストリーチャンネルによる当時の縮絨の実演シーンです。和訳はありませんが面白いので是非ご覧ください。↓) 

https://youtube.com/watch?v=cdJVqPQXG9I

ページトップへ