<NIGEL CABOURN> MALLORY JACKET - LINEN
ニットの上にハリスツイードのジャケットを羽織り、足にはゲートルを巻いただけの軽装で世界最高峰、8200mのエベレストに挑んだジョージ・マロリー。
大英帝国の威信をかけて困難に挑んだ男の名を冠したジャケットです。
注目すべくは、デザイナー、ナイジェルと同じくビンテージファブリックについて造詣の深いリッカルド・ブルー二率いるイタリアの老舗ファブリックメーカー、リリア社によるリネンヘリンボーン生地。
コレクションごとにデザインしているため今しか出逢えない貴重なファブリックです。
糸段階からインディゴで染め上げた堅牢かつ光沢の美しい生地感とオールシーズン着用可能な程良い重厚感を持ち合わせた極上の逸品です。
袖は本切羽になっています。
裏はレーヨン100%なので袖通しがスムーズです。
水牛の角から削り出した伝統的なホーンボタンを搭載しています。
衿元をチンストラップで留めて、高所の低温や寒風に対応することができます。
登山用リュックサックを背負う肩や肘には強い負荷がかかります。1920年代、強い摩擦を防ぐために肩や肘にはコットンキャンバスが使われていました。
ショルダーパッチの搭載については、補強以外にもう一つ、考えられる目的があります。
現代の登山用ダウンウェアにはコールドスポット(ダウンパックの縫い目など、冷気が侵入しやすくダイレクトに影響を受ける部分)を軽減するため縫い目を排除、または極端に少なくしたデザインが見られます。
ダウンウェアの発明されていない時代に生まれたマロリー卿のジャケットのショルダーパッチもこれに共通し、ツイード部分から侵入する冷気を高密度の層で覆う事によって最小限に抑え、暖かさを保とうという試みから生まれたのではないでしょうか。人体において肩は冷えやすい部位であり、体温の低下は山では命取りになり得るからです。
ナイジェルケーボンのマロリージャケットにはデザイナーお気に入りのイギリス製ベンタイルが使われています。
ベンタイルは、第2次大戦当時、英国のシャーリー研究所で開発された耐水性と防風性の高いコットン生地です。 それは、海に墜落したパイロットの命を救うために誕生しました。
島国である英国を囲む海は、北極に連なる厳寒の環境です。
5度前後の冷たい海中に投げ出された場合、約20分が生死の分かれ目でした。
20分を過ぎると、低体温症によりその後いくら暖めても兵士は助からなかったのです。
しかし、英国の英知を集結し苦難の末に誕生したベンタイルにより、兵士の生存率がほぼ0%から80%へと激変しました。超高密度にコットンを織り上げることで、軽く防水性が高い生地となり、冷たい海水の侵入を防ぎ、低体温症からパイロットを守ったのです。
チンストラップは取り外してジャケットの内側に収納できます。