<NIGEL CABOURN × RED WING>MUNSON BOOTS
2012年のDr.マンソン・ブーツに続く、レッド・ウィングとナイジェル・ケーボンのコラボレーション第2弾は、第一次世界大戦時に英国軍のコンバットブーツとして造られていたB-5ブーツに着想を得て、それに両ブランドのテイストを加えてチャッカブーツに仕上げた、「マンソンB−5チャッカ」です。
元々英国軍のB-5ブーツは、6~7インチ程度の丈の、外羽式のプレーントゥブーツでした。先芯(*)を使わない柔らかなつま先を持ち、三条ステッチで縫われたライニング無しのクォーター(靴のサイドパネル)は履き口で切りっぱなしに仕上げられ、ヒール部のカウンターポケットがクォーターの外側に縫い付けられるアウトポケット方式が採用されていました。ソールは当時の革靴のほとんどがそうであったようにレザー製で、グリップと耐久性を良くするために底面にホブネイル(スパイク)が埋め込まれていました。
(*)先芯=靴のつま先の形状を維持するために、つま先のアッパーレザーとライニングの間に入れられる、樹脂またはレザー製のパーツ
この英国軍のB-5ブーツを、チャッカブーツに仕上げるにあたり、レッド・ウィングとナイジェル・ケーボンは、この英国軍ブーツと同時代にアメリカ軍で使われたミリタリーラストであるマンソン・ラストを用い、B-5ブーツ同様、先芯を使わない仕様とし、その時代にアメリカのワークブーツの主流であったつま先のスタイル、キャップドトゥを採用しました。
マンソン・ラストは本来つま先の高さがあるタイプのラストですが、先芯を使わずに仕上げたことで、そのボリューム感は控えめで、また履き込むと少しずつつま先が低くなっていきます。
履き口のコバはB-5ブーツと同様の切りっぱなしで仕上げ、アウトポケットをレッド・ウィング社が100年近く使い続けているピューリタン・ミシンを使って三条ステッチで縫い付ける仕様としました。
ソールはレザーのベースにグリップと耐久性が良いラバーのタップ(ソール前面のハーフラバー部分)をプリセットしたグロコード・メンダリオン・ソールです。元々のグロコード・ソールは1920~30年代にレッド・ウィング社が使用していた滑り止め用コード入りのラバー・ソールです。今回使われているレザー・ベースのグロコード・メンダリオン・ソールのラバー部分のデザインは、当時のグロコード・ソールをモチーフとしたものです。
ウェルトにはスプリットリバース・ウェルトと呼ばれる、いわゆる立ちコバを使い、靴の全周をぐるりとソールに縫い付けるオールアラウンド・グッドイヤー製法とし、コバをステインで染めて仕上げました。
アッパーステッチのグリーン系の色に合わせたローデングリーンのレザー・レースと蝋引きのブラウンの丸紐の二種類が付いています。
<レザーについて>レザーには、かつての英国軍のB-5ブーツに使われたオイルを含ませたスウェードレザーに似たラフアウトレザーであるホーソーン「ミュールスキナー」と、ブラウンのクラスト(仕上げ前のベースレザー)にブラックの塗膜を施したブラック「クロンダイク」レザーを使用しました。いずれのレザーも、レッド・ウィング社の自社タンナーでなめし、仕上げられたものです。
ホーソーン「ミュールスキナー/ベージュ」はオイルを入れたラフアウト(銀付きスウェードレザー)をワックスで仕上げたもので、靴のフィニッシュ工程でのブラックのワックスバーを用いてバフがけを行うことで、ユーズド感とも言える独特の陰影をもたせています。
*ラフアウトレザーとは、革を裏返した起毛面をそのまま使用しており、スエードとは異なる粗い風合いです。
ブラックの「クロンダイク」は、いわゆる茶芯のブラックレザーです。履いていくうちに、表面の黒い塗膜の下のブラウンの地が見えてきて、エイジングが楽しめるレザーです。
<MUNSON LAST>1912年、マンソン博士がワシントンの陸軍学校の軍隊衛生学の教授であった時、歩兵部隊用ブーツの為に開発したラストがマンソン・ラストです。彼は4年の歳月をかけて、約2,000人もの兵士の足を調べ、靴のフィッティングについて調査して、このマンソン・ラストを完成させました。その後ミリタリーブーツのラストとして制式採用され続け、現在でも一部のミリタリーブーツに使用されています。